以前に紹介した「子どもの心の病気がわかる本 市川宏伸」と同じ「健康ライブラリー イラスト版」というシリーズの一冊である。内容的に重なるところもあるが、こちらは「ストレス」というキーワードによって全体をわかりやすくまとめているのが特徴だ。
「ストレスのせいで調子をくずした」とか「現代はストレス社会だ」などと言われるけど、ストレスってなんだ?と、あらためて言われると漠然としてよくわからない。あるいは、曖昧な言葉だから、なんでも「ストレスのせい」と、便利に使われるところもある。
この本では、どんなことが子どもにとってストレスで、子どもはその時どんな反応をするのか、わかりやすく書かれている。ストレスを単に悪いものととらえるのではなく、それをうまく乗り越えれば、成長し強くなることができる。でも、そのためには、親の理解と助けが必要だ。
そもそも、子どもにとっての最大のストレスとは、親による無関心である、といっても過言ではないだろう。学校や外の世界で少々つらいことがあっても、親がそのことに気づいて応援してくれれば、子どもはそれを糧にしてもっと大きく成長できることも多い。
また子どもは大人よりも受動的な立場にいるので、自分でストレス状況を避けたりすることがむずかしい。特に親の都合で家族の状況が変わったり、引越しや転校を余儀なくされる場合である。親の方も自分のことでいっぱいで子どもにまで手が回らないということになりがちだが、そんな時こそ子どものストレスをケアすることが大切であろう。
この本では、子どもの心の病気や発達障害のこと、さらには自傷や自殺といった重大な事柄についてもきちんと書かれている。そのような深刻な事態の時に、どのように専門機関に相談したらよいかということもわかる。
ただ、ストレスはなるべく小さいうちに対処した方がよい。そのためにも、本書は子どものストレスを予防するための本として、多くの親御さんにあらかじめ読んでいただきたいものである。
監修者の笠原麻里氏は、国立成育医療研究センターでこころの心療部育児心裡科医長をつとめ、臨床と研究の一線で活躍されている方だ。
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