「子ども虐待が発達障害である」というこの本の題名が、著者である杉山登志郎氏の強い主張をなしている。
子ども虐待は後天的になされたものであるが、それは「心の傷」というような生易しいものでなく、脳に明らかな損傷をもたらす障害なのだ。
この本はやさしく明快な口調で書かれているが、一般向けというよりむしろ子どもにかかわる職種に向けられた啓発の書という感じがする。杉山氏は子ども虐待が激増しているこの国の現状を憂いつつ、自らが中心となって進めるあいち小児保健医療総合センターでの取り組みを通じて、未来へ向けての具体的な処方箋を示している。
本書で紹介されている事例とその治療は、半端でなくすごい。これがどんなにすごいことか、多少とも児童にかかわる者であればわかるだろう。
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